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miyabie: 2009年9月アーカイブ

●Aさんのプロフィール●

年齢:34歳

職業:某化粧品メーカー研究職

家族構成:夫(37歳)、長女(3歳)、長男(1歳)

家族歴:特になし

身体既往歴:特になし

病前性格:社交的で友人が多く、小さい頃から何事にも頑張るタイプで成績優秀。責任感が強く、引き受けた仕事は相手の期待以上の成果が出せるようにと最後まで一生懸命取り組む。

出産後、張り切って復職したが

Aさんは、3年前に長女を、昨年長男を出産したのち、2人の子供を保育園にあずけて、会社に復帰しました。

もともと頑張りやのAさんは、職場に復帰した当初は子育てと仕事を両立させようと張り切っていたのですが、復職して3ヶ月が経過した頃からなぜか疲れが取れず、仕事に対する意欲もわかなくなりました。家に帰っても家事をするのが億劫で、いらいらして夫にあたってしまいます。

やがて仕事も家事も手につかなくなったAさんは、会社の産業医に相談することにしました。

産業医はAさんの話を聞いた後、「うつの状態による症状かもしれませんね」といいました。Aさんはからだの病気ではないかと思っていたので驚きましたが、心も体と同じように疲れると症状が生じることがあるという産業医の話しを聞いて、精神化の専門医を受診してみることにしました。

仕事も家事も完璧にの落とし穴

精神科ではより詳しく最近の状況について話を聞かれました。

Aさんは「頑張りたいのに頑張れない状態なんです。仕事も育児もしっかりやると自分で決めて、仕事をつづけることにしたのだから、どちらも人から文句を言われないくらい完璧にやろうと思っていたのに・・・。会社の仕事が十分出来ないと、せっかく復職させてくれた上司に申し訳ないし、同僚も迷惑だと思うに違いないんです。でも、家事や育児の手を抜くわけには行きません。最初はそれなりに自分でも出来ると思っていたのに、どうしてこんなことになってしまったのでしょうか・・・」と、自分の気持ちを率直に述べました。

それを聴いた医師は「今はつらい様子ですが、誰かに相談しましたか?」とさらにたずねます。Aさんは「そういわれてみれば・・・」と、誰にも相談していないことに思い当たりました。

夫には、最近疲れるという話はしたけれど、まだ復職したばかりだから頑張ってみようと思って、そのままになってる。上司には、今は残業を減らしてもらっている立場なのに、これ以上仕事を軽くして欲しいなどとは癒えない。私が家事や仕事をきちんとすれば、みんなに迷惑をかけずに済むのにと思うと、なかなか相談できない・・・。

このように、自分ひとりで頑張っていたことに築いたのです。

Aさんは、精神化の医師から、「仕事も家事もパーフェクトにやろうとしてストレスを溜め込んだため、うつ状態になっているのです。そういう状態になっている女性は多いのですよ」と、説明を受けました。自分だけがつらい思いをしているのではなく、一般的に起こりうる状態であることを知り、少し安心できました。

医師からは、「今のAさんは抑うつ状態になっており、エネルギーが低下し、何をするにもやる気が出ず、楽しいことも楽しめない状態にあります。あまり頑張らず、まずはご家族や職場の方に相談してみては・・・」とのアドバイスもありました。また、うつ状態がより速く改善するためにと、抗うつ薬を処方されました。

家へ帰ったAさんは、さっそく夫に話をしました。自分が今まで仕事と家庭を両立しようと頑張ってきたこと。でも、どうしても全てには手が行き届かず、それがプレッシャーになってよくうつ状態になっていること。家事と育児の一部を分担して欲しいこと。それらを伝えたのです。

夫は、Aさんがそのような状態に追い込まれていることを知らなかったのでビックリしたようでしたが、以後子供を朝、保育園へ送っていくことと、子供の入浴を手伝ってくれることになりました。また、職場でも上司と話をし、一部の仕事の期限を延ばしてもらうことが出来ました。そしてAさんは、少し余裕が出来た時間を浸かって、一人でゆっくり入浴することにしました。

こうして、自分から周囲の人に相談して環境を整えたことと、抗うつ薬の効果もあって、精神科を受診してから1ヶ月たった頃にはずいぶん調子がよくなりました。

Aさんは、半年は病院に通って、薬を飲みながら体調を整えようと考えています。そして「今振り返ると、私はずいぶん肩肘を張って頑張っていたんだな、思います」と語っています。

働く女性に見られる「スーパーウーマンシンドローム」

Aさんは、職場では男性と同等に仕事をし、家庭では家事も子育ても完璧にこなす良き母、良き妻であろうと一生懸命になりすぎてしまったことにより、ストレスを溜め込んでしまった結果、うつ状態となってしまいました。職場でも家庭でも「手伝って」と癒えなかったことが、さらにストレスを溜め込む状況を作り出していたのです。

このように、仕事と家庭の両立に悩んだり、ストレスを感じる女性は多く見られます。それによってストレス症状を呈する状態が「スーパーウーマンシンドローム」です。

これは、働きながら家事や育児も頑張りたい、しかし周囲のひとには迷惑をかけたくない、というプレッシャーによりストレス状態となり、精神的なうつ状態のほか、さまざまなストレス症状(不眠、食欲低下、過食、腹痛、下痢、便秘、頭痛、めまい、耳鳴り、倦怠感など)を引き起こす一連の症候群のことです。

仕事と家庭の両立という問題に限らず、何に対しても「完璧にやらなくては」という気持ちが強すぎるために、仕事とプライベートの両立がうまく行かなくなったり、複数の仕事を抱えて、どれも立ち行かなくなることもあるでしょう。それらも同様の状態です。

スーパーウーマンシンドロームになりやすい人には、次のような性格傾向が共通して見られるといわれています。

・全てにおいて完璧主義

・理想が高い

・自分ひとりが我慢すればよい、という気持ちが強い

・周囲の期待にこたえる気持ちが強い

・他人に頼りたくない

このように、完ぺき主義で、困っていても人に頼らず自分で解決しようとする人は、ストレス状態に陥る危険が高いと言えます。

それでは、このようなストレス状態に陥らず、仕事と家庭を両立していくためにはどうしたらよいのでしょうか。ストレスを溜め込まないためには、つぎの3つに留意することが大切なのです。

①全てのことを完璧にしようとするのをやめる

妥協することに抵抗を感じるかもしれませんが、全てのことを完璧にこなすのは誰にとっても不可能です。何を優先すべきか順序を考えてメリハリをつけたり、自分が出来る範囲をハッキリさせたりすることも大切です。

②他の人に相談する。仕事や家事を分担してもらう

どんなに頑張っても、周囲の人は意外と本人の大変さを知らないものです。「私さえ我慢すれば」と思わず、自分が大変な状況であることを伝え、「自分のできる範囲を超えることは他の人にも手伝って欲しい」と相談しましょう。特に夫に対して、自分のつらさや悩みを繰り返し率直に伝えていくことから、新しい関係が生まれることもあります。

③リラックスする時間を持つ

一日の中で、自分のための時間を少しでももつことが重要です。一人でお茶を飲んだり本を読んだり、ゆっくりお風呂に入ったりするなど、リラックスして仕事や家事を忘れる時間を作りましょう。

そして、時には、頑張っている自分を褒めてあげましょう。

●Bさんのプロフィール●

年齢:28歳

職業:某ソフトウェア会社派遣社員(システムエンジニア)

家族構成:一人暮らし

家族歴:祖母がうつ病

身体既往歴:幼少時にアトピー性皮膚炎

病前性格:目立つタイプではありませんが、明るく、真面目なため、周囲の人に信頼されています。

人前で話をしたり、上司など立場が上の人と接したりするときは、やや緊張しやすい傾向があります。

 

重要な仕事を任されたのに・・

Bさんは、真面目で正確な仕事ぶりを認められ、派遣先の会社で、ある重要なプロジェクトチームの一員として仕事をすることになりました。

それから半年間は多忙な日々となりましたが、Bさんはこれまでの仕事の経験を生かせるチャンスだと必死に取り組み、その結果をまとめて上司に報告しました。しかし、それを上司はあまり評価してくれず、さらに難しい課題を課してきます。Bさんは、やはり自分の仕事では不十分だったのかしらと、少しがっかりしましたが、次こそは良い結果を出そうと、それまで以上に仕事に邁進しました。

しかしその後、なんとなく元気が出ず、仕事にも集中できない日々が続くようになりました。結果を出さなければと焦るほど、仕事のことが頭から離れず、夜もよく眠れません。また、月経の10日くらい前から常にイライラして、特に気分の落ち込みが激しく、会社を休みがちになってしまいました。

 

会社を休むことに抵抗が

そんなときBさんは、会社のイントラネットで「ストレス自己チェックリスト」を見つけ、自分の状態について当てはめてみました。すると、欝の疑いがあるということがわかったのです。まさか自分がうつになるとは思ってもいなかったBさんはショックを受け、「このまま会社を休みがちになってしまったらどうしよう」という不安もあったため、自宅近くのメンタルクリニックを受診してみることにしました。

その結果、医師から、抑うつ状態であることと、月経前不快気分障害も伴っているという説明を受けました。また、今の状態について、「ガソリンのない車と同じで、幾らアクセルを踏んでも動かない状態です。だから、ガソリンが十分補充されるまでは、ゆっくり会社を休んだほうがいいですね」とも言われました。

会社を休みことには抵抗があったものの、出社しても仕事がはかどらないというのが現状だったため、Bさんは思い切って3週間ほど休みをもらうことにしました。そして、うつ状態を改善させるための抗うつ薬と、睡眠が十分取れるようにするための睡眠導入薬を服用し、自宅で療養することになったのです。

 

うつの気分のとき何を考えている?

会社を休み、自宅で療養を始めて約一週間たった頃、Bさんの気分はほぼ改善してきました。しかし、早く会社に復帰しなければと思う一方、会社のことを考えると少し気分が憂うつになります。

Bさんが診察時にそのことを相談すると、医師は「気分が沈むとき、どんなことを考えていますか」と質問してきました。Bさんは、改めて思い起こしてみて、「そうですね・・・仕事のことが気になります。心配になります。復帰しても仕事がうまく行かなかったらどうしようと。そうすると絶望的な気分になってしまいます」と答えました。

医師はさらに、「仕事がうまく行かないということは、あなたにとってどのようなことを意味しているのでしょう?」とたずねます。

Bさんは少し考え、「自分が認めてもらえないように感じます。自分はなんてダメな人間なんだろうと思い、自分が必要とされなくなってしまう、みんなから嫌われてしまう、と怖くなります」と答えました。

続いて医師は、「なぜそのように考えるのか、それを裏付ける事実はありますか?」と質問します。

Bさんは「結果をまとめて提出したけれど、上司にそれを評価してもらえず、さらに難しい課題を出されてしまいました。きっと、私の仕事がダメだったからに違いありません」

そして、正社員ではなく派遣社員という立場であることも、そのような考えに影響している、とも答えました。

すると医師は、「先ほどの考えを否定する事実はありますか?」

Bさんは最初何も思いつかずに戸惑っていましたが、「プロジェクトチームの一員に選ばれたのは、それなりに私の仕事が評価されていたからかもしれない」と、ふと気づきました。そして、上司は自分の全てを否定していたわけではなく、認めてくれていた部分もあるのだと、それまでとは少し違う見方が出来るようになりました。

また、上司がさらに難しい課題を要求してきたのは、自分の仕事が悪かったからではなく、プロジェクトとしてもっと良い成果を出すためだったのかもしれない、と思えるようになりました。そしてそのように考えると、少し気持ちも楽になり、仕事に対する前向きな意欲も出てくるようになったのです。

Bさんは三週間後、無事に復職しました。今では、困ったことがあれば上司や先輩に相談しながら、以前よりも少し自信を持って仕事に取り組んでいます。

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