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miyabie: 2008年5月アーカイブ

うつ病になりやすい状況とは

 「今の社会は、努力しても報われない」と感じている人は、少なくないのではないでしょうか?毎日のニュースを眺めていても、こつこつと真面目に勤めていた人たちが理不尽なリストラにあったり、金融業界の規範になるべき人物がインサイダーまがいの取引で莫大な利益を得ていたりと、「正直者が馬鹿を見る世の中だ」と嘆きたくなるようなことばかりが目や耳に入ってきます。実は、このような"報われなさ"はうつ病の重要なリスク・ファクター(危険因子)になることが知られています。アメリカの行動科学者セリグマンは、うつ病患者さんの根底には"学習性無力感(絶望感)Learned helplessness"があるとする仮説を立て、それを裏付けるべく、イヌ、ネコ、ヒトなどに対して行った種々の実験結果を発表しました。セリグマンによれば、対処不可能な出来事(トラウマ)に繰り返しであった生体は、のちにそれと似た出来事に出会うと無力感が先立ち、それに対処することを最初から諦めてしまうようになる、そして、このような無力感がうつ病患者さんの心理として特徴的にみられるということです。つまり、努力しても報われないことが続くと、今度もまた報われないだろうと無力感に陥り、抑うつ的になるというのです。確かに、うつ病にかかると、それがどんなに簡単なことであっても、「私にはできません」と最初から白旗を揚げる傾向があります。また、うつ病患者さんの認知(ものの考え方やとらえ方)の特徴の一つに、"過度の一般化"と呼ばれるパターンがあります。たとえば、ひとつ失敗をすると、その一つだけではなく失敗体験を拡大して考えて、「すべてがうまく行かない」、「自分はダメな人間だ」と極端に一般化する傾向があるのです。この認知パターンは、"学習性無力感"を背景にしたものと理解することもできます。

うつになりやすい性格(パーソナリティ)とは? 

 うつ病になりやすい性格(パーソナリティ)や状況については、さまざまな研究がなされています。一般的には、生真面目、几帳面、責任感が強い、仕事熱心、グチがいえない、他人に合わせる、秩序を重んじる、などの傾向がある人は、うつ病になりやすいといわれています。アメリカの精神科医で、認知行動療法という治療法を編み出したベック博士は、うつ病になりやすい性格として、自律型パーソナリティと社会依存型パーソナリティの2つのタイプをあげています。

自律型パーソナリティ          |社会依存型パーソナリティ                                      

・ 男性に多い                                 |・女性に多い

・ 高い価値基準と目標                    |・安定した対人関係を求める

・ 外部の反応にやや鈍感                |・拒絶されることは孤独より苦手である

・ 行動指向的                                |・孤立を避けようとして例えば友人関係を広げる

・ 助力を求めることを潔しとしない      |・受け入れることに喜びを見出す

・ 目標達成に意義を見出す              |

 

自律型パーソナリティは男性に多く、高い価値基準や目標をかかげ、助力を求めず、目標が達成されることに喜びを見出すタイプで、目標や価値観の挫折によって抑うつ的になりがちです。いわゆる"仕事人間"に多いタイプです。一方、女性に多いとされる社会依存型パーソナリティは、親密な対人関係を求め、他社に拒絶されることを何より恐れる傾向があり、自分にとって重要な人との別れや気持ちの行き違いなどをきっかけとして抑うつ的になりやすいといわれています。 2005年にアメリカの精神科医ケンドラー博士らが実施した調査研究では、女性の場合、他社と親密な情緒的交流を持って、社会に十分受け入れられていると感じられたとき、うつ病発病のリスクが低下するという結論に至りました。しかし、これは男性の場合には当てはまらず、社会的・情緒的なサポートは男性のうち秒発病のリスクには殆ど影響を及ぼしませんでした。その理由はまだ明らかにはなっていませんが、博士は、「男性の場合も社会的ネットワークに頼っていいると思うが、それは情緒的交流というよりもむしろ、活動や娯楽といった行動を共にするということに主眼があるようだ」と推察しています。女性にとって、自分の気持ちを隠さずに打ち明け、悩みや喜びを分かち合える仲間や友人の存在は、うつ病を回避するためにとても重要です。

 皆さんは、「スーパーウーマン・シンドローム」という言葉をご存知でしょうか。

これは1987年に出版されたエッセイのタイトルで、当時の流行語になりました。スーパーウーマン・シンドロームとは、完璧な母、完璧な職業人、完璧な主婦という理想的な(ある意味では非現実的な)女性になろうとして疲労困憊してしまった女性達が体験する、抑うつ、不安、絶望感、怒りなどの症状を指します。現代の会社のシステムや待遇は男性向けに出来ていて、必ずしも女性の生理的な状態や事情に合いません。率直に言って、女性は男性の何倍もの成果をあげて初めて、男性並みに認められるのが現実です。そのため、社会の中でやりがいを求めて働く女性は、常に"働きすぎ"の状態になります。それに加えて、社会は"良妻賢母"もしくは"母性"という理想像を女性に要求します。子供達が事件を起こせば、母親の"母性"の欠落が取沙汰され、女性達を不安にさせることもしばしばです。特に、スーパーウーマン・シンドロームに陥りやすい女性は、家族を自分の延長と見なしやすく、自分よりも家族や他の誰かを優先し、自分が出来ていないこと(特に子育ての面で)に不必要なまでに罪悪感を抱き、頼まれるとノーということができず、誰かに頼むことに抵抗を感じやすいといわれています。さらに、周囲の人たちがこのような行動に否定的な反応を示すとき、本人の葛藤や不安は強まります。このような女性達がうつ病にならないために必要なことは、"理解してもらえた"と感じられる情緒的なサポートと、自分のやったことが"報われた"という感覚です。

 

うつ病が女性に多いわけ

うつ病は、男性よりも女性に多い病気です。発病の頻度は男性の約2倍と言われています。うつ病の原因自体がまだ明らかになっていないので、発病の頻度になぜ性差があるのかもハッキリとはわかっていないのですが、次のようなことが言われています。「女性は男性に比べて、月経周期や妊娠などで内分泌(ホルモン)の変動が激しく、その影響があると考えられています。たとえば、産後うつ病や更年期うつ病の発病には、急激な内分泌の変動が関与していると言われています。また、女性を取り巻くさまざまなライフイベント(就職、結婚、出産、離婚など生活環境に変化や影響をもたらす生活上の出来事)やストレスが負荷となって、うつ病にかかりやすくしている可能性があります。決して望ましい状況ではありませんが、子育てや介護は女性の肩にかかってきているのが現実ですし、職場でも30代、40代の女性の労働力(頑張りや無理)があてにされている面があるのではないでしょうか。深夜の電車内で、残業を終えた女性達の姿を見かけることは珍しくないはずです。

スーパーウーマン・シンドロームをご存知ですか?

現代の女性は、多様化する価値観の過渡期に位置すると言われています。精神科医の某氏は、「母親が娘として生きた時代は、娘が今生きている時代の直接的なモデルにはなりがたく、母娘間、嫁姑間の価値観の伝達は一昔前よりいっそう難しくなった」と述べています。つまり、対男性だけでなく、本来ならば、お互いに共感し、支えあうことが出来るはずの女性同士の間で生じる価値観のずれや、それに伴う摩擦が女性達の新たなストレスになっているというのです。たとえば、夫婦間の家事や育児の分担、子育ての方針、職業に対するモチベーションや考え方は、同じ女性でも世代によって、また個々人によって、大きく異なっています。(つづく)

 

現代社会はストレスに満ちています。職場では急速に進むIT化についていけずに不安を抱え、地域社会では人間関係が希薄になって孤独に悩み(或いは人間関係が疎ましくなって悩み)、家庭では子育てに不安を感じる人たちが増えています。 こうしたストレスが引き金になって、うつ病にかかる人も少なくありません。現代は、誰もがうつ病にかかる可能性がある時代だといえるでしょう。特に女性は、男性に比べてうつ病にかかりやすい傾向があります。 しかし、うつ病は早期に発見して適切な治療をすれば治ります。そのためにも、うつ病とはどのような病気なのか、どのような人がうつ病にかかりやすいのかを知っておくことが大切です。

うつ病はよく"心の風邪"にたとえられます。 うつ病を経験した人たちは、「そんな生易しいものじゃない」と反論していいのですが、それはこの比喩が、病気の程度のことではなく病気の頻度-つまり「誰でもかかる可能性がある」という意味をこめたものだからです。100人のうち4~10人が一生の間に一度はうつ病にかかることを知っていただければ、その頻度が決して少なくないことが判ると思います。「4~10人とは、ずいぶん幅があるじゃないか」と思われるかたもいるかもしれません。これは、調査方法の違いからくる幅でもありますが、うつ病にかかったひとが必ずしも病院で受診するとは限らないので、正確な数字を知るのが難しいせいでもあります。 うつ病にかかっているのに病院を訪れない人たちのなかには、病気だとは思わずに、「甘えている」「怠けている」などと自分を責め「皆に迷惑をかけている」と悩み、自分の世界に引きこもってしまうひともいます。また、心の病気に対する誤解から、「心の病気は弱い人間がかかるものだから、知られると恥ずかしい」「心の病気は治らない」「心の病気とからだの病気は違う」などと考えて、誰にも相談できずにいるひともいます。 うつ病の患者さんたちは、うつ病という病気そのものの苦しみだけでなく、病気を抱えたことによる葛藤や孤独を体験しています。それは必然的に、うつ病にかかったひとたちを取り巻く周囲のひとたちも同様に悩み、苦しんでいることを容易に想像させます。そう考えると、もはやうつ病は周囲も他人事ではなく、皆が理解し、かかわっていく病気であると言えるのです。

ある方が、うつ病のことを"こころの寿命"と表現されていました。たくさんの意味を持った表現だと思いますが、「からだの寿命が尽きてしまったひとのことを、頑張りが足りないと言えるのか?医者にかかれば寿命は尽きないのか?」という意味もこめられているそうです。

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