うつ病になりやすい状況とは
「今の社会は、努力しても報われない」と感じている人は、少なくないのではないでしょうか?毎日のニュースを眺めていても、こつこつと真面目に勤めていた人たちが理不尽なリストラにあったり、金融業界の規範になるべき人物がインサイダーまがいの取引で莫大な利益を得ていたりと、「正直者が馬鹿を見る世の中だ」と嘆きたくなるようなことばかりが目や耳に入ってきます。実は、このような"報われなさ"はうつ病の重要なリスク・ファクター(危険因子)になることが知られています。アメリカの行動科学者セリグマンは、うつ病患者さんの根底には"学習性無力感(絶望感)Learned helplessness"があるとする仮説を立て、それを裏付けるべく、イヌ、ネコ、ヒトなどに対して行った種々の実験結果を発表しました。セリグマンによれば、対処不可能な出来事(トラウマ)に繰り返しであった生体は、のちにそれと似た出来事に出会うと無力感が先立ち、それに対処することを最初から諦めてしまうようになる、そして、このような無力感がうつ病患者さんの心理として特徴的にみられるということです。つまり、努力しても報われないことが続くと、今度もまた報われないだろうと無力感に陥り、抑うつ的になるというのです。確かに、うつ病にかかると、それがどんなに簡単なことであっても、「私にはできません」と最初から白旗を揚げる傾向があります。また、うつ病患者さんの認知(ものの考え方やとらえ方)の特徴の一つに、"過度の一般化"と呼ばれるパターンがあります。たとえば、ひとつ失敗をすると、その一つだけではなく失敗体験を拡大して考えて、「すべてがうまく行かない」、「自分はダメな人間だ」と極端に一般化する傾向があるのです。この認知パターンは、"学習性無力感"を背景にしたものと理解することもできます。
